最近、当社にも「段ボールはPPWRに適合しているか」「適合宣言書や技術文書を提出できるか」といった、PPWRに関するお問い合わせが増えてきています。2026年8月12日の原則適用開始を前に、欧州向け製品に使用する包装につ […]
最近、当社にも「段ボールはPPWRに適合しているか」「適合宣言書や技術文書を提出できるか」といった、PPWRに関するお問い合わせが増えてきています。2026年8月12日の原則適用開始を前に、欧州向け製品に使用する包装について、対応の確認を進めている企業が増えているものと考えられます。
一方で、PPWRの対象となる包装や求められる対応、適合宣言書・技術文書の作成主体については、包装の用途や供給形態などによって判断が異なる場合があります。そのため、「段ボール会社がどこまで対応すればよいのか分からない」という声も少なくありません。
本記事では、2026年7月時点で公表されているEU規則や欧州委員会の資料をもとに、当社で確認・整理したPPWRの概要と、段ボール包装に関する実務上の考え方をご紹介します。あわせて、PPWRへの適合を示すために必要となるEU適合宣言書・技術文書の概要、作成主体の考え方、段ボール会社へ資料を依頼する際のポイントを解説します。

PPWRは、EU市場に流通する包装と包装廃棄物を対象とする規則です。包装の材質や製造国を問わず、包装の設計、含有物質、リサイクル可能性、包装の最小化、表示、適合文書などを幅広く規定しています。
PPWRは2025年2月11日に発効し、2026年8月12日から原則適用されます。ただし、すべての要求が同じ日に始まるわけではありません。リサイクル設計、包装の最小化、表示など、今後、段階的に適用される要求もあります。
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STEP 1 PPWR公布 EU官報に規則(EU)2025/40が掲載 |
STEP 2 発効 規則として効力が発生 |
STEP 3 原則適用開始 適用される要求について、適合性評価・技術文書・EU適合宣言書への対応が必要 |
STEP 4 2028年~2030年以降 要求が段階的に本格化 共通表示、リサイクル設計、包装最小化、再生プラスチック、再使用目標など |
そのため、PPWR対応では「2026年8月12日から何が必要か」だけでなく、「2030年以降に何が求められるか」も見据えて、包装に関する情報を整理しておくことが重要です。
※各要求の開始日は、実施規則・委任規則の制定時期などにより異なります。上図は全体像をつかむための概要です。
PPWRの対象となる包装について「適合している」と説明するためには、単に調査票へ「適合」と記入するだけではなく、PPWRの該当要求に対する適合性評価を行い、その根拠を技術文書にまとめ、最後にEU適合宣言書(DoC)を作成する必要があります。
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STEP 1 適合性評価 対象包装と適用要求を確認し、根拠資料を評価 |
STEP 2 技術文書 材料情報・図面・評価結果・試験資料などを整理 |
STEP 3 EU適合宣言書 技術文書を根拠として、製造者が適合を宣言 |
この3段階は別々の作業ではなく、ひとつの流れです。技術文書は適合宣言の裏付けであり、適合宣言書はその評価結果を正式に示す文書です。
EU適合宣言書(Declaration of Conformity:DoC)は、対象となる包装がPPWRの該当要求に適合していることを、PPWR上の「manufacturer(製造者)」が自らの責任で宣言する文書です。
適合宣言書には、包装を特定する番号、製造者の名称・住所、対象包装の説明、適用した法令・規格・技術仕様、署名者などを記載します。これは第三者機関が発行する認証書ではなく、製造者が根拠を確認したうえで作成する自己宣言です。
技術文書は、適合宣言の根拠をまとめた文書体系です。包装の概要と用途、設計図面、材料構成、適用した規格・技術仕様、要求事項への評価方法、試験報告書などを整理し、対象包装がPPWRの要求を満たしていることを説明できるようにします。
つまり、適合宣言書だけを作成しても、その内容を裏付ける技術文書がなければ、十分なPPWR対応とはいえません。
PPWRでいう「manufacturer」は、必ずしも包装を物理的に製造・加工した会社と一致しません。包装の種類、包装に表示される名称や商標、誰が包装の仕様を決定したかなどによって判断されます。

欧州委員会が2026年3月に公表したガイダンスでは、包装の種類ごとの考え方がおおむね次のように整理されています。
顧客ブランドの商品を入れる販売包装や集合包装では、通常、商品を充填して包装済み製品をEU市場へ出す顧客企業がPPWR上の製造者となります。この場合、顧客企業が包装全体の適合性評価を行い、技術文書と適合宣言書を作成します。段ボール会社は、箱の材質、構造、寸法、重量、含有物質調査など、顧客企業が文書を作成するための材料を提供します。
一方、輸送包装では、段ボール会社がPPWR上の製造者となり、適合宣言書・技術文書を作成する場合があります。また、包装に顧客の名称・商標が表示されている場合や、顧客が設計仕様を決定している場合など、個別の条件によって判断が変わります。
したがって、基本的には顧客企業が文書を作成し、段ボール会社が根拠資料を提供する形を想定しつつ、案件ごとに包装の用途、表示される名称・商標、設計の決定者、EU市場へ出す主体を確認することが重要です。
文書の下書きや資料整理を段ボール会社などの第三者が支援する場合でも、それだけで法的責任が第三者へ移るわけではありません。欧州委員会のガイダンスでは、包装の適合性に関する法的責任はPPWR上の製造者が負うと説明されています。
※企業規模、取引形態、EU域内の事業者との関係などによる例外があります。個別案件では、輸入者・販売先・専門家等を含めて確認してください。
PPWRでは、包装または包装材料の供給者に対し、製造者が適合性を説明するために必要な情報と文書を提供することが求められています。
段ボール会社が包装材料・箱の供給者となる場合、主な役割は、顧客が技術文書と適合宣言書を作成するために必要な製品情報や根拠資料を提供することです。たとえば、次のような情報が考えられます。

ただし、段ボール会社が把握できるのは、自社が供給する包装材料や箱の情報です。商品の壊れやすさ、輸送条件、積載条件、他の包装部材との組み合わせなどを把握していなければ、包装全体が最小化されているか、最終的にPPWRへ適合しているかを段ボール会社だけで判断することは困難です。
段ボール会社へ「PPWRに適合しているか回答してください」とだけ依頼しても、確認範囲が分からず、適切な資料を準備できない場合があります。
資料を依頼する際は、少なくとも次の内容を具体的に伝えることが重要です。
特に、顧客指定の調査票や必要資料の一覧がある場合は、最初に段ボール会社へ共有することで、調査の行き違いや回答の遅れを減らせます。
A. 段ボール会社の資料は重要な根拠の一つですが、それだけで包装全体の適合を判断できるとは限りません。内容物、他の包装部材、輸送条件、包装の最小化なども含めて、PPWR上の製造者が評価する必要があります。
A. まず、その案件で誰がPPWR上の製造者となるのかを確認する必要があります。販売包装・集合包装など、顧客企業が製造者となる案件では、顧客企業が適合宣言書・技術文書を作成し、段ボール会社は必要な製品情報や証明資料を提供する形が基本です。一方、輸送包装などでは段ボール会社が製造者となり、文書を作成する場合もあります。
A. 日本国内だけで流通し、EU市場に出ない包装は、原則としてPPWRの対象ではありません。ただし、その段ボールを使用した商品が顧客によってEUへ輸出される場合は、顧客から資料提供を求められる可能性があります。
PPWR対応では、適合性評価を行い、技術文書で根拠を整理し、その結果に基づいてEU適合宣言書を作成します。多くの販売包装・集合包装では、顧客企業がこれらの文書を作成し、段ボール会社は材質、寸法、重量、含有物質、試験結果などの根拠情報を提供します。
ただし、輸送包装などでは段ボール会社がPPWR上の製造者となり、適合宣言書・技術文書を作成する場合もあります。まず包装の用途と関係者の役割を整理し、作成主体を確認することが大切です。
一方で、段ボール会社へ「PPWRに適合していますか」とだけ質問しても、対象範囲が明確でなければ回答は困難です。対象品番、包装の用途、必要な調査項目、証明書の形式、提出期限を具体的に伝えることが、スムーズな調査につながります。
段ボール包装設計マイスターでは、原則として、お客様が適合宣言書・技術文書を作成するために必要となる材料を提供する立場で対応いたします。当社が供給する段ボール製品について、確認可能な範囲で材質・寸法・重量・含有物質調査などの情報提供に協力いたします。
当社では、包装仕様の見直しをはじめ、輸送時の破損防止、段ボールの強度改善、梱包作業の効率化、物流コストの削減、環境に配慮した包装への切り替えなど、段ボール包装に関するさまざまな課題の解決をお手伝いしています。
現在の包装にお困りの点や、改善したい課題がございましたら、お気軽にご相談ください。
本記事は2026年7月時点の公開情報に基づく一般的な解説です。PPWRの実施規則、ガイドライン、適用時期、個別案件の解釈は変更・更新される可能性があります。実際の対応では、EU公式情報、輸入者、販売先、所管当局、専門家等の最新情報をご確認ください。